◆津軽のエコファーム

短い夏が終わりかけた青森県津軽地方を9月初旬に旅してきました。

青森空港から日本海側に車で30分ほど走ると、田園風景の向こうに津軽富士と呼ばれる岩木山が見えてきます。かつて岩木山のふもとにはリンゴの農事試験所があり、明治初年から政府の事業として欧米から取り寄せたリンゴを研究し、苗木を周辺に分配したことでリンゴ生産が盛んになりました。

このあたりで化学肥料、除草剤を使用しない土づくりと、農薬をできるだけ抑えた栽培でリンゴ作りをしている農園があると聞き、伺うことにしました。


◆若き担い手

リンゴ園では《つがる》が真っ赤に実を染め、枝がしなるほどたくさんのリンゴが生っています。

右を向いても左を向いてもリンゴばかりの風景に圧倒され
ているところに、「リンゴ園ばかりだから、迷われましたか?」と、ご主人成田英雅さん、次女千秋さんが迎えてくれました。

成田農園は120年間続いた農園で英雅さんで4代目になるそうです。



◆蜂の働き

リンゴは5月に白い花を開花させ、マメコバチで受粉させます。昭和30年以前
は人の手でひとつひとつ人工受粉をしていたそうですが、人手不足が深刻になり、このあたりではマメコバチ養蜂が定着しました。

良果生産のため中心花だ
けを残し、周りの4つの花は摘み取ります。


◆蜜をうむヒカリ

リンゴ栽培には果実に袋をかけない無袋栽培と、袋をかける有袋栽培があります。

無袋栽培では、日光を浴び糖度をたくさん含んだ果実が生ります。完熟するぎ
りぎりまで収穫を待ち、蜜が茎の部分にたまったところで収穫します。《サンふじ》などがこの方法で栽培されています。




◆色をうむヒカリ

一方、有袋栽培は6月に袋をかけ、雨風から果実を守りながら、秋の収穫を待ちます。収穫直前に袋をとり、いきなり強い日光を浴びることで鮮やかで美しい色合いになります。蜜を含まないので、傷みにくく長期保存に向き、《ふじ》、《ジョナゴールド》などがこの方法で栽培されています。


「リンゴの栽培でたいへんなのは、冬場の作業です。」と成田さんは言います。

寒くなり枝だけになったリンゴの木を、実がつく枝をなるべく残しながら、日光が十分当たるように剪定します。この剪定作業が、次の収穫量を左右するだけに気がぬけません。

そしてリンゴ園に生息する野うさぎ、野ねずみが苗木の
皮や新芽を食べるため、毎日1本づつの見回りも必要です。積雪の多い津軽地方では、本当に重労働にちがいありません。

「跡継ぎは次女の千秋さんなのですよね。力仕事も多いしたいへんですね。」と話しかけると「明日、トラクター運転免許の試験なんですよ。」と明るく笑って応えてくれました。


◆眠りの巣箱

最後に、リンゴを保存する納屋にマメコバチの巣を置いてあるということで、見せていただきました。

ハチの巣は、簡単な構造で束にした萱(かや)をリン
ゴ箱にぎっしりと詰めたものです。

萱(かや)を割って開けてみると、そこには来年の春までの眠りについたハチの成虫が並んでいました。


リンゴの開花とともに目を覚ますハチたちが来年も活躍してくれますように、と祈りながら農園を後にしました。


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