◆大地の薫り

蒸留釜が設置されている蒸留所を一歩出ると、見渡す限りのハーブ畑が広がります。Kenさんの農園をはじめとして、ノーフォーク精油蒸留所(以後、NEO)を共同経営している農家の畑も遠くに続いて見えます。

Kenさんはわれわれを
案内しながら、時々足元の土を指で砕いては、色や形状、香りを確かめます。

「精油づくりは土づくりからはじまるんだ。」
ちょうど開花の時期を迎えているカモマイルやラベンダー畑の傍らには、水蒸気蒸留した後のハーブの残渣(残りかす)がこんもり積み上げてられていました。

「ハーブの残渣は、このまま堆肥化させて畑に戻してやるんだよ。」

堆肥化した残渣は優れた土地改良剤となり、畑を肥沃化させ地力を増すことができるのだそう。当然、収穫量にも影響するし、畑によって同じ種類のハーブでも香りが違ってくるという。

ハーブの栽培では害虫のことも頭が痛い問題だが、やっかいなのは雑草なんだという。

しかも、ハーブそっくりな雑草、例えば、カモマイルにそっくりな雑草が混じってはえてくるのだという。

Kenさんは、足元のカモマイルそっくりな花を
むしり取って比較して説明してくれたのだが、正直われわれには見分けがつきません。

多品種を栽培するNEOでは、隣の畑のハーブが混じりこんで生えてきたりもします。当然これも、雑草扱いで排除して収穫、蒸留しないと、せっかくのハーブ精油の香りに別のハーブ臭が混じってしまっては製品になりません。



◆明日を翔ける香り

最後に、最近栽培をはじめたというヘンプ(大麻)畑へ。

大麻=麻薬の等式を想起し「うぉっ」と声をあげる一行にKenさんは笑いかけます。

「僕の友人も大麻の栽培をはじめたっていうと、喜び勇んで見にきたけど、残念な がらこれは大麻の麻薬成分がほとんど含まれてない品種改良した大麻なんだよ。」

麻は栄養価の高さや効能からシードオイルや精油に関心が集まっており、化学肥料や農薬を大量に使う必要もなく栽培できる点からも、環境負担が少ない植物として注目されているのだとか。

それでもまだ英国でヘンプ精油を蒸留しているのはNEOだ
けだというからなかなか挑戦的です。

◆種からボトルまで

さて、短い訪問であったが、Kenさんたちの暖かい対応のお陰で、精油づくりの現場をかじることができたし、なによりNEOの精油づくりに対する想いやポリシーに触れることことができたのは大収穫であった。

" Seed to Bottle "(種からボトルまで)。

NEOのサイトを飾るこの言葉の機微を深く知った取材訪問でありました。


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